帰る処

HATOOの鳩様よりイラストを頂きました!  ゼノギアス別館

 

オフライン本『帰る処』収録の「帰る処」より、ジェサイアの妄想シーンを!
本編を知らない方も見られるかと思い、抜粋だけでは意味が分からなさ過ぎるので、ちょっとした話を即興的に付けてみました。
抜粋箇所は、学校での交友すら無さそうなカールが被験体で廃棄処分になったラムズ(シグ)を拾ってきた、って聞いたジェシーが不可解に思って一体どんな心境で?と想像した、脳内イメージの部分…でした。


他人に心を許さぬ、身寄りの無い少年。日が傾き、寒々とした夕暮れ。道端、捨て置かれた箱の中に、一匹のみすぼらしい仔犬。

牧羊者の仔犬(←即興SSタイトル)

少年が通りがかろうとした時、仔犬はうずくまったまま、眉だけを上げて少年へ視線を向けただけたった。
冷たい箱の中で、幾人もの通行人をそうして見送って来たのだ。鳴こうが跳ねてみせようが、足を止めるだけで、すぐに遠ざかって行く。箱の中よりも、冷たい家へ帰っていく者達だった。
足を止めたばかりか、少年は屈んで箱の中を覗き込んで来た。また去って行く者だと、半ば諦めてしまっていた子犬は、慌てて起き上がる。声を聞いた時には、視界がゆらゆらと揺れていた。尻尾が、振り切れんばかりの勢いで、左右に揺れていた。
「僕の家へ、来るかい?君さえ良ければ、だけれど」
返事をするまでもない。少年も、聞くまでもなかったと、気付いただろう。足踏みをして、ヒャンヒャン、と吠え立てると、その体に暖かい手が二つ伸びて来る。足踏みができなくなり、宙を2,3回掻いてから、それは懐かしい感覚で、大人しくしていないといけないのだと、すぐに気が付く。少年は、仔犬の目をじっと覗き込んで、尋ねた。
「僕の名前は、カーラン。良い友達に、なれるかな?」
仔犬は、答える代わりにそっと目を逸らし、少年の鼻先をペロっと舐めた。

「カール君のお話なの?」
「うわ、わ、おわっ!」
開いていたワードプロセッサのソフトを慌てて最小化させたが、全てもう手遅れである。ジェサイアの後ろで、彼の手から紡ぎ出される文字の列を静かに、物珍しそうに、楽しんでいたラケルは、「最初から最後まで読んでいた」と告白した。
エッチな動画を見ている所を見られる方が、全然。今のは、エッチな動画を見て更にセンズリ掻いていた所を見られるのと同等な程、恥ずかしい。居た堪れない。
「帰って早々、何を始めたのかと思ったら」
「趣味……悪ぃぞ……」
恐る恐る、振り返る。ラケルはいかにも楽しそうに、笑った。
「ジェシーは私と違って、とても素敵な趣味を持っているのね。知らなかったわ」
そうなのだ。こうしていても、悪い趣味を持った彼女を益々楽しませてしまうばかりなのだ。ジェサイアは「畜生」と吐き捨ててから、すっかり開き直ってしまう事にした。
「畜生」
一度では足りず、二度目を吐き捨てて、頭を掻き毟る。ラケルは、ころころと笑っている。
「あーんなに、文句ばっかり言ってたのにね。あの、高等部の子でしょう?情が移っちゃったのかしら。ね、ね、今のは第一話?書き溜めているの?実話なの?創作なの?」
「書き溜めてる訳ねぇだろう、くそ、面白がって……畜生……」
開き直ってしまおうと決めたのだった。今度こそ、決心して、どこから説明しようかと言葉を探した。
「実話、っつうか……えぇとな……」
そもそも、始まりは何だったか。あの小僧が、そうだ、思い出した。ラムズの少年を。
ジェサイアは、不意にアッと大きく叫んだ。
「すっかり忘れてた!」
突然大きな声を出すから驚いたではないかと、ジェサイア以上に大きな金切り声で不平を怒鳴りたてるラケルに、手を翳して一先ず謝り、落ち着けさせ、そして急に大声を上げてしまった訳を弁明する。
「ヤク漬けの奴を一人、預かる事になったから」
「ヤク漬け?預かる?何、何処でよ」
「ウチで。だからさ、面倒見て貰おうと思ってな」
「ウチで、誰に!」
「お前に」
それはきっと、弁明ではなかった。ラケルは、更に大きな声を張り上げた。
「何考えてるのよ!ヤク漬け?犬や猫、拾って来るのと違うのよ!?」
犬みたいなものだから、大丈夫だ。そう宥めようとした矢先、ジェサイアの携帯電話のベルが鳴った。


感想、頂いてしまって!更にこんなイラストも寄せて下さって!
これはジェサイアでなくても堪えられません、吹き出しますってw何考えてるんですかジェシー先輩!ってそもそも私が書いたんですか!何考えてるんでしょう私!w
優等生らしいボンボン、しかも体育座り!そして無表情!なカールに、ピーンと伸びた尻尾!前のめりに箱から出ちゃってる前足!なシグ、
そりゃ良い友達になれると思いますw
突き出たお鼻、今にもペロリしたさそうだったのでさせてしまいました。

鳩様のサイトHATOOでは、センスほとばしる漫画や美形で可憐なカールにウホウホさせて頂いております!是非とも訪れてみてくださいませ!

 

(こぼれナントカ)
意気揚々足取り軽く帰って行ったと思ったら、小説書きたくて…だったんですかジェシー…
ヒロインが同人屋というギャグは見ますが、まさかのジェシー。びっくりです。
ソラリスの夕暮れは「日が昇り」じゃないかと思ったんですが、オフなんですよね……手遅れである。プディングの件もあるので開き直ってます。
シグは犬のような、ランカーでしたね。ラケルさん、ちょっと惜しかった。
この続きもいつか書いてみたいなぁ

11.3.8