トマト・プディング

本編を、Quartet様にてご掲載頂いております!

こちらよりどうぞ↓

 


トマト・プディング おまけ

昨日、ヒュウガが知る限りはおそらく初めてと思われる、体調不良による欠席をしたカーランの姿が、この日は変わらぬ佇まいでそこに在った。
人も増え始めた朝のロビーで、ヒュウガは彼の姿を追い、声を掛ける。
「カール」
振り向くカーランは、やはり、普段と変わらぬ様子だ。それでも尋ねる。
「どうですか、調子は」
「あぁ。もう、何て事はない」
熱が出て、一日ひたすら眠って、今日になったらケロリと治ってしまっていた、と言う。
「少し……鼻声か?」
言われてみれば、そんな気もするが。
「ほとんど分かりませんよ」
「そうか」
それでは、と今にも去って行きそうな空気にヒュウガは制止を掛け、慌てて鞄の中を探る。
小さなメモリー・ディスクを探し当て、差し出した。カーランは出されるままに受け取り、首を傾げる。
「昨日、休んだ分の板書です」
「休んだ分?そうか、お前とも確か一緒のが…」
「ではなくて、一日分全部…あ、いえ、ひとつ抜けがあるんですが、大体は」
「一日分…?」
眉まで顰めるカーランに説明する。カーランが講義を丸一日休むという事と、彼が昨日出るはずだった講義の全てとを、シグルドから伝えられ、講義内容を他の生徒から貰い今日の朝に渡して欲しいと頼まれたのだと。
「大変だったんですからね。昨日はひとつしか被ってませんでしたし、それに聞いた事も無いようなのまで。知り合いで取ってる人なんか、居ませんよ。6時限の、何でしたっけ?そんなの、私達、出て良いんでしたか?」
ひとつヒュウガがどうしても回収できなかったという講義を、希望すれば高等部所属でも受けられるのだと説明し、未だ眉を顰めたままで、ヒュウガの不平に更に不平を返して来る。
「大変と言われても、頼んだ覚えはないぞ」
「でしょうね。私は“シグルドに”頼まれたんです」
「それを俺に愚痴られた所で仕様がない。シグルドに言えば良かっただろう」
「言って聞くと思いますか」
「では俺の所為だと言うのか」
「あなたが風邪なんか、ひくからです」
ヒュウガはしばらく、険しくなるカーランの目つきを正面から受け止め、自身もきつく睨み返していたが、先に、すっと視線を逸らし落とした。
「……らしくもない。急に動けなくなるなんて。兆候とか、なかったんですか。こんなハードなカリキュラム組んでいるから…気付かなかった、そうなんじゃないですか」
カーランは、黙っている。
「シグルドは、相当心配していましたよ。変な病気じゃないかって。宥めるのだって、大変だったんですから」
ヒュウガの落とした視線の先で、踵がふいと反転し、コツコツと離れて行く。溜め息を吐き、立ち尽くしてそれを見送っていると、意外な場所で彼は足を止め、そしてまた戻って来た。
缶入りのドリンクを手に弄びながら、
「“同情料”だ」
ヒュウガの目の前まで戻って来ると、そう言って差し出す。
「迷惑料と手間賃が足りなければ、シグルドに請求しろ」
受け取ったドリンクは、じんわりと暖かい。両手の平でただそれを感じながら、言葉も発せずに居るヒュウガの前でカーランは
「データを抜いた後で返す」
と言ってディスクを掲げ、背を向け、今度こそ人混みの中へ消えて行った。
残されたヒュウガはドリンクの栓を開け、ゆっくりと一口飲み下す。特別な味でもない、普段から慣れ親しんでいる味だった。

次の週の同じ日、5時限目の講義を終えると、シグルドの提案で、ジェサイアの宅へ皆で押し掛け、夕食を馳走になった。

トマト・プディング 終
ぽぽ子

 


受々しいの書いた反動…?
攻カールが好きです。攻臭くても可愛い。攻でもツンデレ。むしろ攻めの方が、魅力的かどうかに関して言えば素敵なんじゃないかと思う。場合によるか…受もそうなんだ、魅力的かどうかは書き方によるんだw
しかしヒュウガが未だ固まりません…動くままに書いたら、こっちもツンデレ…?
そうなんですか?私の脳内ヒュウガ…ツンデレなの…?
ツンデレ×ツンデレとかほのぼのした感じになりそうで癒やされるですが…。
カールとヒュウガの関わり方ももっと掘り下げて考えたいものです。
気は合いそうだなーと思うのですが!人情的なものよりも現実的なものの見方?な事をまず考えてポロッと口にしちゃうような、ジェシーに非難されてたみたいな部分。大人になって慌てて自分からフォロー入れるようにはなったけど(マルーに関しての辺り)、若い頃はあれももっと包み隠さずだったのかなぁとか考えると、うちのカールとは意気投合してくれそうです。
犬猿の仲かのどっちかギリギリの所でw

それと、シグとジェシーに「ヒュウガの言う事なら聞きやがる!」ってブーブー言われる、みたいなそんなのを書きたかったんですが、変な所に力が入ってしまって伝わり難そうですw
それとそれと、ヒュウガとカールに「セーシ(講義の名前なんかでの「生物資源学」の略で)」連呼させるつもりだったんですが、もう猥語言わせはいいよそういうのは十分本編でやったよ!という事で却下…w
初めて音だけ聞いた時はびっくりしましたとも…ね、誰でも驚きますよね…?



本編の方もまた、山も意味もオチも無い具合で…
受カールの萌え特化な!と考えてたんですが、他にももうちょっと力入れるべきだろうとか、もっと量的にさらっと軽く読める長さじゃないといかんだろうとか反省点は尽きず…
内容、表面的には軽く明るくできたと思うのですが、そっちは…大丈夫かな…?

一個、意味を持った話というか、前々から書きたいと思っていた話で、シグの想像する父親像=カール?という考え。
29シグのしっかりさん具合は責任をしっかり意識してるからだとかで、王宮入りした頃からだとか、むしろ父親が居ない母は自分が守らなきゃ的な思いがあって育てられた部分かとは思うのですが、それにプラスしてカールから学んだ部分もあったら良いなぁという妄想。副長としてだとか、人を使う立場として如何に在るべきみたいなものは、カールから学んでたら良いなーと。
カールが母性的な優しさの部分をシグから学び取ったとしたら(まぁこれは、妄想出発で尚且つ妄想の中の時間軸でしか発揮できなさそうですがw雪原アジト辺りですとか…)、シグは父性的な強さの部分ををカールから学んでて欲しいな、なんて。
愛を求めてたが故の心根に流れる本当の優しさ、とありましたが。愛されるには自分からも愛さなきゃいけないって気付く、分かって来て、その愛し方っていうのもやっぱり誰かに教わるものだと思いますし。愛されてそこから愛し方を学ぶものだと思うのです。
それはベッカー少年の記憶、でも良いんですが。せっかくシグラムなので、そこに見出したい所でありましてw
とかゆーのをやっちゃうから泥沼化するんですが…ね……

丁度良いかもしれない機会なので、俺脳内設定を補足的に…ころころ変わるかもしれませんがw

シグとヒュウガは2人部屋、カールは一人部屋で特待生専用のおっきいお住まい。寂しかったらおかーちゃんも呼んで暮らせるお坊ちゃま仕様。カールの部屋には娯楽用品(テレビとか)無いらしいから部屋行ってもやる事って言ったら喋ってるか、せkks…
ソラリスは気温一定とは限らない説……じゃあ寮と学校は殆ど屋内通って行けるに違いないという逃げ道を編み出す脳内(=通学にコートはおかしい)
ユーゲントは、(初等?)中等、高等、大学、と全部合わせてユーゲントとか呼ばれてるらしいっぽい。高等部とかからの入学も可能っぽい。
高等部は高校というよりニホンの大学みたいな、自分でカリキュラム組んでの単位制らしいですね(今回の話)でも、HRなんかもやるっぽいです。一日一回?週一回?かは分からないですが担任もちゃんと付いてるらしいです。何かの相談用の先生的な位置付け的に。
カールは二年目くらいまでで大体卒業までの単位取り尽くしちゃって、三年になったらほとんど学校来ないで、ジェシー辺りと一緒に軍の方の活動にかかりっきりだったりすると良いかな、とか。カール・シグ・ヒュウガでワイワイ学校で顔合わせて授業一緒に受けて、なんてしてるのもこの時期で最後なのかなーと。
とか書いてますが、しょっちゅう、奴等の年齢と学年と、って忘れます。そして確認もちゃんとしてな…い…
間違えてたらすみませ……ビリーの歳も……
楽しげな話書くとしたらこの16歳?の頃のかなとかいうマイ括り。

 

トマトプディング
本編完成 2010.11.12
おまけ完成 2010.11.16