3P目指す3

(先に書いていて没になった別のバージョンがあります)

 

不要な物は極力持たない性質を、それは家庭環境から身に付いたのだろうかと考えなくもなかったが、何にせよ誇って良い点だと、カーランは秘かな自負を抱いていた。それでも、“投げる物”はよくもまあこんなにも、溜め込んでいたものだ。最後に自分自身まで“投げ”られ、捻ってしまったのか、首をさすっているシグルドは、先まで戦場であったベッドの上に散らばった“飛び道具”を、手早く片付けている。本や生活雑貨、不要と言いきれるものは無いようだったが、一緒くたに寄せ集められていると、ただのゴミにしか見えない。
ベッドの上を取りあえず空けさせたシグルドは、散々物を投げられ、首も痛め、それでも懲りないのかカーランににじり寄ってくる。
「ねぇ、聞いて」
先ほどの弁解を、しようと言うのだった。
「聞きたくない」
どんな弁解をされるのか、聞くまでもなく分かった。だから、聞く必要もなかった。
言われた所で、今更白々しいとか事実がなかったことになる訳ではないからだとか、そう考えているのとは違った。弁解される内容を、既にカーラン自身の内で、納得しているのだ。
二人が友人以上の関係であった可能性は、無いとは言いきれないのかもしれない。しかし現在に於てはシグルドがカーランに感情面で後ろめたいものを持っているなどと、疑いたくはなかった。実際の有り無しに関わらずだ。シグルドが如何であれ、カーランはカーランで、それを信じていなければならないと、思うのだった。シグルドのカーランに対する感情が偽りか如何かより、カーラン自身から向かうシグルドへの感情を偽りにしたくなかった。
今や腹を立てているのは、先程まで腹を立てていた自分自身に対して。謝りたいと思うのは、カーランの方も同じだった。
それなのに。
「そういう風に怒ってくれるのは、嬉しいんだけどさ……」
この男は、全く筋違いの事を言う。
「独り占めとかされたい……じゃん?」
更に図星までを突いて。
シグルドの言う通りだった。信じるとか、疑うとか、そのもっと根底には、確かに在る。自分は、彼を、独り占めにしたい。過去も全て、自分のものに。不可能極まりない、我欲を、否定しようとするこちらの努力さえ踏みにじり、丸裸にしてしまってからそこで、「愛している」と告げるその男は、狂おしいほど愛おしく、憎たらしかった。
本当に、手足を断って、箱にでも収め、ただ一人で愛でてやりたいくらいだった。そんなカーランの衝動を、シグルドは感じ取ったのかどうか。ヘビに睨まれたカエルのように身動きをひたりと止め、しかしそれでも、無神経なのか肝が太いのか、
「ちゃんと話聞いてくれた後で、“お仕置き”するって言うなら、喜んで聞くんだけどな」
などと言ってのけるものだから、
「ふざけた事ばかり抜かしていると、今度こそ愛想を尽かすぞ!出て行け!」
反射的に怒鳴り付けていた。彼の謝罪を受けるどころか、自分から謝るタイミングさえ掴み損ねてしまったと、カーランは頭を抱えるのであった。

どうしてこんな無神経な類の者と、こうした付き合いを長く続けていられるのか。カーランは不思議で仕方なかった。他人に過度な干渉をしない、ヒュウガのような類の方がずっと付き合い易い、そう思えるのに。深く知り合えば、相手の良さと、同じだけ欠点も見えてくる。それを、まるで傷の舐めあいのように、許し合い自分に妥協させる為の関係など、人を腐らせるだけ。かえって不利益を生む。シグルドと知り合う以前も、そして現在でも、カーランはその持論で居た。だから、信じ難かった。
自分の欠点を恥ずかし気もなく曝し、しかもそれを許せと言うのでなく、非難されるのを待っているかのようでいて、その反面で、無遠慮に土足でカーランの欠点を暴きに来る。今度は非難するのでなく、許す為に。
自分は、腐って行っているのだろうか。際限なく自分を甘えさせようとするこの男に、腐らされているのか。
例えば、日常的に為される、こんな行為で。
「カール、おいで!」
胡坐をかいた膝をパンパンと打つ音と共に。更に何の真似か、チチチッと舌も鳴らしてみせている。何の脈略があったのか、ただ今の間に、その行為に至るまで。
「何のつもりだ、犬でも呼ぶみたいに」
シグルドは首を振った。
「犬はこうだろ?」
ヒュウヒュウと口笛を鳴らし、
「猫だよ」
そう言って、チチチッと舌を鳴らす。
「ば……っ、馬鹿にしているのか!」
腐らされている。確実に。この男の所為で、自分は腐っていく。
カーランは確信した。危険極まりない。これが、日常のひとコマでは。何が何でも、愛想を尽かしてしまうべきなのだ。
「来ないの?カール」
膝をパンパンと叩いてみせる。
「出て行けと、言っただろう」
「専用の特等席なのに」
「聞こえないのか?今すぐ、だ」
「ほら、おいでよ。空いてるよ?カールの特等席」
「シグルド」
もう、遅いのかもしれない。自分は、彼と知り合い、触れた時点でもう、芯まで腐ってしまったのだ。
「……困ったな、出て行けないや」
シグルドがカーランを見上げ、笑う。腹立たしい、“してやったり”の表情で。
「そこに座られたら、出て行けないよ」
カーランを、胡坐をかいた腿の上に跨らせて、笑っていた。
「……仕方ない、明日まで猶予を持たせてやる……」
「本当?嬉しいなぁ。ありがと、カール」
つ、と首を伸ばし、唇を触れ合わせてくる。手遅れならば、という妥協が、やはり手遅れなのだと知らせる。
膝の上で不機嫌を露わにしているカーランの顔をシグルドが覗き込んでいた。
「カール?ごめんな」
「聞きたくないと、言っただろう。弁解など、もう……」
「一人で居させて、ごめん」
その言葉は不意を突いた。
「寂しい思いさせて、ごめん。不安にさせて、ごめん」
カーランは、また謝るタイミングを掴み損ねていたのだった。もしかすると、彼が意図して奪っているのかもしれない。カーランを謝らせないため。カーランが自身を悪く思わないように。
腐らされている。これ以上ないほどに甘やかして。産湯のような温度に、長い間浸され、ふやけて行くようだった。
「カール?」
言葉を発しないカーランが、まだ不機嫌そうに見えたのだろう。シグルドが覗き込み、呼びかける。
この優しさも暖かさも、心地良いとは決して認められないから、カーランは不機嫌ぶったままで、両腕を肩口へ荒々しく投げ出し代わりに、
「そのことはもう、折り合い付いただろう。何時までも愚痴っぽく言うつもりは無いぞ」
と、不遜に言い渡した。
「そうか……ごめんな」
「だから、謝らなくていい」
「……分かった」
腕の先で手は組み、檻の鍵は閉じてしまう。シグルドは恐らく、何処までも見透かしていて、核のひとつひとつまで眺めていて、それでもやはり、嬉しそうに笑うのだった。カーランが彼を閉じ込めたつもりでも、彼はまたその上から覆いを掛けようとする。腰に手を回され、同じように後ろで鍵掛け、引き寄せて。暖かくて、柔らかくて、心地良くて、芯をまさぐるような、深い口付けを送る。
自分は、きちんと閉ざしていたはずだった。閉ざした入り口には、注意書きも、あったはずだ。それでも開かれたのだから、覚悟の上だったと、見なそう。
「足りない」
身を引こうとするのも、唇に噛み付いて引き止め、より深くに導く。目測が甘かったなどという言い訳も、開けてしまた後には聞き入れられない。絡みついたシグルドの舌の、更に奥から間抜けに、
「ふぁい」
と、承諾の声が届けられた。

舌の表裏の感触の違いを愉しんで、裏側で、全てに通じる脈絡に触れる。シグルドの手が衣服をたくし上げながら擦り昇り、カーランの肩甲骨を撫でる。その指まで繋がっている、脈絡の端と捉え、強く吸い付いてみるのだった。シグルドが組んだ脚に力を込め、上へ跨るカーランは心ばかり、持ち上げられる。指先が、また別の場所へと求め、彷徨い始めた。
「……ヒュウガ、が、まだ居るんだろう」
「じゃあ、しないの?」
「奴を早く帰らせないと」
全く酷い物言いだとの、自覚はある。この先をしたいから、さっさと帰れ、だとは。
しかしそもそもは、連絡も無しにやって来た、この男が悪いのだ。目の前の元凶であるシグルドがそれを揶揄する資格は無いと、カーランは開き直ってしまうことにした。
「風呂に入っているのか」
「あぁ……帰らない気かもしれないぜ?」
「……何をやっているんだ、奴は。人の部屋で」
シグルドは失笑し、カーランの腰骨の辺りを指先で掻くようにしてむずむずとくすぐる。何を言いたいのか、分かる。ヒュウガから見れば、友人の来訪中に何をやっているのかと、逆に呆れるだろう。そう指摘したいのだ。
もちろん目撃されたのなら、ただそれだけでは済まない。カーランは食事前のヒュウガのやり取りを思い出していた。
「やはり」と言い、喜々として、何を質問して来るか。どれほどの質問を寄越すのか。それは恐怖すら呼び覚ます。
秘かに打ち震えるカーランに、しかしシグルドは、とんでもない事を持ちかけようとするのだった。
「ヒュウガが居たら、できない?」
カーランには耳さえ疑う質問だ。瞬時に、そのとんでもなく頭の悪い問いかけを、罵倒で以て否定する。何を考えているのかと、疑い、また次には、何かとんでもなく頭の悪い事を考えているに違いないと、カーランの勘が働き始める。
「馬鹿な事を考えているんじゃないだろうな……」
予想は付くが、予想さえしたくないことだ。
即却下の決定を、まずはかわそうと言うのか、シグルドは得意の緩い笑みで持ち去り脇に置き、代わりに別のものを持ち出して来た。
「俺、カールがこっちで仲良くしてるのが、ヒュウガで良かったなぁって思うんだ」
「あれだけ、俺とヒュウガが何だと騒いでいたのに。心境の変化か?俺の居ない間に、何があった?」
「な……っ、何も、何も無いからな?何も無いけれど!」
「ん?うろたえているな」
「カール!だから俺は……っ、」
カーランは肩を震わせ、笑った。拗ねて突き出たシグルドの唇を戻すように、自身のを押し当てる。
「分かっている。別に、何かあったと本気で考えているのではない。仮に……あったとしても、俺に対して不義に当たるような心があるとは思わないさ」
「……それって何か、逆に怖い感じするんだけど」
「信じているからな?」
「怖い、って」
まるで競うように、交互に首を伸ばし唇を重ねさせ合いながら、やじろべえのように、ゆらゆらと前後に揺れ、そしてとうとう、シグルドが意を決したように、強く力を込めてカーランを押し返す。反発もせず、されるがままに、カーランの背はシーツを負さった。
「俺の方は……恥ずかしいけど、カールみたいには思えないや。俺なんか、偶にしか来れないんだから、いっそ来なくても良い会わなくて良い、ヒュウガが居るし、って通告されるんじゃないか、やっぱり不安だけど」
「そんな事まさか……」
「不安だけど、な?だけど、逆に言えば、そういう風に、カールにはきっと頼りになる奴だと思うんだよ。あいつは。古い付き合いだし、よく分かってる。だから、言ってみれば安心なんだよな。俺は遠くに居て、カールに何かあっても、すぐには来てやれないから。でもヒュウガがこっちに居るっていうなら、あいつなら、まかせて大丈夫だって気がするんだ」
シグルドの言葉は極めて優しく、カーランを想う気遣いが込められていて、それが言いようのない不快感を、カーランの胸に重く落とし込んで行った。
その事にシグルドは気付いていないのか、顔を僅かに背けた為に露わになった首筋へ、顔を埋めに来る。
「あっ……シグルド」
あわやと、身をよじるが、既にそこへ一点の小さな痛みが走る。顔を上げたシグルドが強く吸い上げてしまった場所を、手でさする。
「ヒュウガに、俺らがこういうことしてるって、言ってないんだって?」
「はぁ?」
シグルドが腰をカーランに押し付ける。倒れ込んで、そのままの体勢だった。臀部に触れるそこの場所が、既に衣服の内側から、何か訴え始めていた。
「あいつは信頼できる。うん、俺が保証するからさ」
「それがどう、関係あるんだ」
断続的にシグルドは腰を押し付けて来ている。素材の柔らかい部屋着の上から、堺の奥を探っている。
「何でも相談できるって事だよ。知っていてもらった方が、突然混乱させないだろう?」
「そういう事を、他所でぺらぺらと話すものではないぞ」
「何で?」
「何で、って……お前は無神経だからな、誰彼話し回りたいのかもしれないが、普通は、」
「男同士だから?」
突然にシグルドが動きを止める。強張って僅かに跳ねた、カーランの太腿を押し下げて広げ直しながら、ニッと笑みを作る。「見つけちゃった」と、一人呟く。
「男同士とかは……関わらず、だ。みっともない、話題だろう」
手でシグルドの腹を押し返そうとするカーランに対抗するように、シグルドはシグルドで、続けて『見つけちゃった』と言った場所へ、捻じ入れるような動作で、カーランを押し返す。
「みっともない?“普通”はそういうことになってるの?」
腰を掴まれていた手を、引き剥がそうと伸ばした腕が、逆に掴まれ捕らわれてしまった。
「カール、おかしくないか?その考えの方が。俺がいくら無神経だって、誰とエッチする仲だとか、人を選ばず話したい訳じゃないよ。それはカールの言う通り、みっともない。でも、……そうだ高校生の頃さ、彼女出来た時はすぐにカールに話したよな?みっともなかったのか?色々……誕生日プレゼントだとか、一緒に悩んで貰ったりもしたけど、そういうのも含めて、そうだって言うのか?」
逆に関して。カーランがシグルドへ、その類の話をしたことがないのかどうかは、如何とも言い難い位置に在った。シグルドのように好んで話は持ち掛けなかったし、話しても、シグルドのような浮かれた思いはあったのかどうか。ただ、尋ねられれば、その時は隠そうとする事もなかった。
「それは……、お前…に、だからだ。お前とヒュウガは、違う」
カーランの両手首を掴み、その顔の脇で押さえつけ、覆いかぶさり詰め寄っていたシグルドの目が丸くなる。その隙、手首からは外させ、指を絡める形で、手の平と手の平を握り合わさせる。シグルドはその形に満足した様子で、手の平を忙しなく擦り付け触り心地を楽しんでいる。
「……そんな嬉しい事言われたって、誤魔化されないからな」
「ニヤけるのを抑えられるようになってから、言うんだな」
男同士だからだろうという指摘も、当たらぬわけではない。差別しない、と宣言された所で、急にあけすけになれるはずがない。そしてカーラン不在の場で、シグルドとヒュウガの間で議論された通り、カーラン自身に差別意識があるという点も、間違いではなく、壁を作らせる理由だった。ただ何や彼や何処かで議論するよりも、性格的な問題で、と大雑把に理由付けるのが、一番多くの的を得られ片付く問題なのだったが。
「大丈夫、ヒュウガは……口数少ないとは間違っても言えないけど、ちゃんと秘密は秘密で守れる奴だし。あぁ見えて常識はちゃんとあるからさ」
如何こう議論するよりも、ここで何よりも大きいのは、カーランの胸に沈んだ、重苦しい不快感だった。
「きっと助けになってくれるから」
「どうしてお前はさっきから……」
「へ?」
言いようのなかった不快感が、不意に明確になったように感じた。何が引っかかっていたのだったか。
「どうしてさっきから、そんなにヒュウガヒュウガと、奴を褒めたてるような真似ばかりを。助けになるだとか、何だ、って……それではまるで、俺が全く頼りがなくて、お前にとって不安材料にしかならなくて……逆に、ヒュウガの方がお前にとって信の置ける存在だと言っているようではないか。暗に、侮辱されている気分だ、それでは……っと、待て!」
「カール、手、離して」
「離すか……っ」
「いいから、離せ、手を!」
「脱がされると目に見えている状況で、離すか、この人類の屑が!」
息は荒く、舌なめずりまで始めた男の両手を、カーランは情熱的に握り締め、どうにか暴走を食い止めていた。
「大丈夫、何もしないから!」
常習手口である。対策は、少しも隙を見せぬようにすること。
「脱がせようとか、そういうのじゃないから」
「誰が……っ、信じるか!」
「俺が脱ぐだけだから!」
「一緒だ阿呆!」
シグルドは一瞬で真顔を作り、深刻そうな口調に変えた。
「どうしたんだよ、今日は……何時になく可愛い気のある事ばっかり、言って」
繰り出されたのは全く同じ温度の発言だったが。
「別に俺は普段と変わらん」
「じゃあ何時も可愛いって言うのかよ、自惚れるな!それは調子に乗り過ぎだ!」
「貴様が普段以上にイカレていると言いたいんだ!」
可愛いといわれる事に対して抵抗やコンプレックスがあるのではない。カーラン自身も、可憐さの一片も備えていないシグルドに対して時折、愛おしさの延長で“可愛い”と感じる事もある。なので、彼に言われるそれならば、正直な所では嬉しいとさえ思っている。しかし彼が言う場合、多くは、カーランに対して意外ないじらしさを見つけて“可愛い”と言うのだ。自尊心の高いカーランは、その場合不愉快でしかない。上に目線立たれるなど、戯れにも甘んじられない。
「ね、ね、俺がヒュウガの事考えるだけでも、やきもち妬いちゃうの?じゃあ、言ってよ『俺の事だけ考えてくれ』とか、な?カールがそんな事言ってくれちゃうなら、俺もう、何もいらないや!」
尚も浮かれた発言を繰り出し続けるシグルドに、青筋を立てながら、どうにかこの男を絶対零度の世界へ突き落としたいと、思案していた。
「シグルド、それは本当か?」
前の発言で、漸く閃いたのだ。
「折り合いは付けたつもりだが……俺はお前を愛している。だからお前が大切にするお前の家族を、俺も大切にするべきだと思って、今は身を引いたんだ。だがお前がそんな下らない考えでいて、“何もいらない”と誓ってしまえる程度の存在を今選んでいるのならば、俺は本当に、言うぞ、シグルド。『俺の事だけ考えろ』なんて、いくらでも言ってやるさ」
カーランを見下ろすシグルドの表情が、今度こそ素の、真顔になる。
そこでカーランは早くも満足してしまったのだった。
ほんの一歩、上に立っただけで、すぐに足元を掬われてしまう起因は、まだいくらでも発生し易い状態だというのに。
「いくら距離が近かろうが、頼りになろうが、お前以外の人間では……。お前の方は、代わりになる奴にでも俺を押し付けてしまった方が、家の方に気を回せて良いとでも思っているのかもしれないが、そういうつもりでなければ、あんな風に……ヒュウガに任せておけば良いみたいな事……」
「カール、やっぱり先に始めちゃおうか?」
「待……っ、貴様!」
「俺、我慢できないや。今日のカールは拗ねたり僻んだり、何なんだよ!胸がキュンキュンしっ放しだ!ヒュウガは途中から交ざってもらえば良いよな!」
カーランが己の大失言を省みる間もなく、新たに重大な問題が発生していた。否、元々くすぶっていたのだ。早々に片付けなかった、これもカーランの失態なのか、それともゆらりとかわしたシグルドが元々、カーランのずっと上の位置に鎮座し続けていたのか。
どちらにせよ、軍配はシグルドに上がりそうである。

11.4.1


終わ……あれ、3Pに行き着いていない…だと!?

先にシグルド視点で書いていたのですが、詰まって没になりました。