天然、時々攻め
初めて対峙した時にも、随分幼い印象を受けた。その時、彼は悪い意味で、子供っぽかった。そして今、敵ではなく仲間として接する彼は、また幼い印象を受けさせる。そのあけすけな懐っこさ故に。 それに加え、ひとつのエピソードを聞いたからかもしれない。ここの組織が如何にして大きくなったか。如何にして人が集まったか。 多くは、戦場に取り残された敗戦の兵を“拾い”集めた者で構成されているのだという。 無意識に自分と、重ね合わせていた。そしてその思いが、また無意識に、口を衝いて言葉になって現れた。 「世話焼きな所はシグルドにそっくりだな。対して拾い癖の方は、俺譲……」 大よそ取り返しのつかない所まで言ってしまってから、はたと気付き、眉を顰める。 シグルドの方を見遣ると、今にも卒倒しそうな程、顔を青ざめさせていた。 「俺は今、酷くおかしな事を、言いかけなかったか?」 シグルドは青ざめたままガクガクと何度も頷き、手を顔の前でブンブンと高速で横に振った。 バルトは幸運にも聞き逃したのか、ぽかんとして二人の顔を見比べている。 「何?何て言った?俺がシグにそっくりで…?」 「何でもありませんよ」 「忘れろ」 彼と自分とは、こうして顔を合わせて初めて存在を知ったのだから、もしそうならば、そういう事になる。 天然、時々攻め 終 |
29シグラム文を書いてて、すごく自然にカールに言わせそうになった言葉。
ついったで呟いてみて、茶碗を洗ってたら小話くらいになりそうな気がして、ついうっかり。
シグのおかーさんの話を思い出すなぁ。
「好きな相手ができた時も死に別れる怖さに自分から身を引いたそうです\裏切り者!!/もっとも、あとあと最後まで共に過ごせばよかったと悔やんでいましたが……」
実際はやっかい呼ばわりなんですがね。
2010.10.25 完成