3話 俺は塵じゃない

 

某、ピンクの髪の女の子が魔法の少女になるとかならないとかいうアニメの3話パロ…というかほぼトレース
ネタバレ&合わせてご覧下さい

 

「俺は、カーラン・ラムサス。お前たちと同じ、士官養成学校ユーゲントの生徒だ。そして……ミァンと契約した、エレメンツの一員である」


「これが最後だっ!」
ウェルスの張った結界が解け、物陰に隠れていたヒュウガは刀を抱えたまま姿を現した。
「いやはや。流石ですね、カール」
「全く……見世物ではないのだぞ」
溜め息混じりに言いながら、カーランは変身を解く。
一件落着したらしいと慎重に確認し、シグルドも恐る恐る姿を現す。
「危険な任務に就いてる、という事は忘れないで居て貰いたいな」
「はいはい、分かっていますよ」
「……あれ、エーテル石…落とさなかったんだな…?」
「今のはまだ幼体だからな。だが、放ってはおけないだろう?何れは大きな力を持つ成体なるんだ」
そう説明すると、行こうか、と二人を促し、カーランは歩き出した。

「二人共、何か願いは見つかったか?」
「そうですねぇ……シグルドは?」
「ううん……」
「まぁ、そういうものだな。いざ考えるとなると……」
「カールは、どんな願いを叶えて貰ったんだ?」
その問いに、カーランは急に立ち止まった。まずいことを聞いただろうかと、尋ねたシグルドは慌てる。
「あっ、いや、どうしても聞きたいというのではないんだ」
その様子を見てカーランが小さく失笑を漏らした。
「俺の場合は……」
空を見、その時の事を思い出す。
――カーランは傷を負い息も絶え絶えに、塵だめ場の瓦礫の間から手を伸ばす。そこにミァンの姿があった。
考えている余裕さえ、無かったのだった。
「後悔している…訳ではない。今の生き方を。あそこで死んでしまうよりは、余程良かったと思っている。しかし……きちんと選択の余地がある者には、よく考えた上で決めて欲しいんだ。俺にはできなかった事だからこそ……」
後悔はしていない。その言葉に嘘は無いのだろう。しかし、心構えも出来ないままエレメンツとしてウェルスと戦う事になった彼の、その時の戸惑いはどれ程だったろうか。後悔はしていない。しかし、後悔を抱かずに居られなかった時も、過去に何度もあっただろう。シグルドはその心中に思い馳せ、俯いた。
「……カール、ひとつ…良いですか?」
足音ばかりが響く沈黙の中、切り出したのはヒュウガだった。
「何だ?」
「願いは……自分の為でなくては、いけないのでしょうか?例えばの…話なのですが…私なんかよりもずっと困っている人が居て…その人の為に、願いを叶えてもらうというのは…」
「ヒュウガ……それって、お兄さんの事か?」
シグルドにはピンと来たのだ。
「……ッ、例えばの、話ですよ」
ヒュウガは慌てた様子で否定する。
「別に契約者自身が契約の対象になる必要は無いらしいが……だが、あまり感心できたものではないな」
カーランは沈重に、言葉を繋ぐ。その瞳は、どこか冷たい光が宿っていた。
「他人の願いを叶えるならば、尚の事、自分の考えをはっきりさせておかなければ。ヒュウガ、お前は、その者の夢を叶えたいのか、それともその者の夢を叶えた恩人になりたいのか……同じようで、全く異なる考えだ」
「カール……」
突き放すような声色だった。シグルドは居た堪れない思いで、二人の顔を見比べた。
「……その言い方は、無いのではありませんか。あなたに私と兄の何が……」
ヒュウガの声は、微かに震えていた。カーランは、すぐに思い直し我に返ったように、表情を和らげさせた。
「……すまない……そうだな、俺には知りえない事情だ。だが、今の内にはっきりしておかねば。履き違えたまま先に進めば、お前が後悔することになる…だから……」
カーランの忠告は二人の事を思って。それは今更過ぎて、指摘される程でもない。ヒュウガも、分かっていた。
「……そう…ですね。すみません、私の方こそ、つい頭に血が昇ってしまって」
ヒュウガはもう、普段の調子に戻り、笑い声に乗せ謝罪を述べる。シグルドはほっと胸を撫で下ろした。
「やはり難しい事だな。焦って決めるべきではない」
カーランの瞳にも、もう冷たい光は宿っていなかった。


カーランと別れ、シグルドは寮室のベッドに寝転んでいた。同じ部屋に、ヒュウガも居る。ルームメイトの彼は彼で、また同じように自分のベッドで横を向き寝転んでいる。
「やっぱり……簡単なことじゃないんだよなぁ……ただなりたいってだけでは、駄目なのかな」
シグルドは独り言を呟いた。すこし間があって、ヒュウガがそれに応える。
「シグルドは……力そのものに憧れているんですか?」
「いや、そういうのでは………うぅん、そうなのかな……俺は元々、何でユーゲントに入れたのかも分からないし…ヒュウガのように剣術ができるのでもないし。だから、カールみたいに……格好良くて。強くなれたら……それだけで、満足なんだけどな……」
「シグルドがエレメンツになれば、カールよりもずっと強くなれるそうですよ」
「えっ……?」
「カールとミァンが話しているのを聞いたんです。その願いによっても、変わって来るらしいですが、シグルドがエレメンツになった時生まれるエーテルの力は、とても想定できたものではない……今までにない素質を持っているって」
「ははっ……何言ってるんだよ。またお前は、適当な事を言ってそそのかすのが上手いから」
「いえ、そんなのではないですよ」
その時、二人の話を遮るように、乱暴にドアをノックする音が部屋に響いた。
「おーい、てめぇら、居るんだろ!」
「……ジェシー先輩!?」
シグルドが飛び起き、その視界の端には、シグルドとは反対に布団の中へぱっと隠れるヒュウガの姿が映った。
「あっ、お前っ……」
「おい!ヒュウガ、シグルド!起きてんだろ!」
怒鳴り声はドアの外から尚響く。
「ヒュウガ、先輩が……」
ベッドを降り、ヒュウガがもぐってしまった布団を揺り動かすが、ヒュウガは無言のまま、寝たふりを決め込んでしまっている。
「シグルドォ!」
ドアが再び、ガンガンと打ち鳴らされた。
「ヒュウガっ……全くもう……」
このままでは、他の寮生に迷惑だ。シグルドは溜め息を吐き、戸口へ向かった。
「先輩……またですか」
グテグテに、酔っ払ったジェサイアの姿が。ドアを開けないでも分かったが、ドアを開けてシグルドはまた大きく溜め息を吐いた。
「先輩、ここは家じゃないですよ。ラケルさんが心配していますから」

シグルド達と別れたカーランは、公園をひとり歩いていた。その後ろに、何者かの気配を感じ足を止める。
「どういうつもりだ?お前のやっている事は、一般人をも危険に巻き込んでいる。何がしたいのだ、お前は」
その背に声を掛けたのは、それまでにも何度か顔を合わせている。エレメンツの、ひとりであった。
「彼らもまた、ミァンに選ばれた者達だ。全くの一般人でもない」
「それで、教育でもしようというのか。奴らを」
「それが迷惑だとでも、言うのか?」
「あぁ、迷惑極まりないな。エーテル石を出さぬ幼体までも無意味に狩り、力の誇示でも、したいのか?」
「力の誇示だって?ふっ……それは、貴様の方ではないか?」
エレメンツとして戦う者が増えるのを、阻止しようとしているその男の方が。
「気付いているのではないか?特に……シグルド・ハーコート。奴の素質に」
カーランが見据えた先で、その名前にも男は表情ひとつ変えなかった。しかし、
「自分より強い相手が邪魔者というのではないか?まるで、爪弾きにされている者の、発想だな」
その言葉で、男は不意に笑い出す。
「爪弾き?ククク、成る程……そうか、随分、そうした者の思考に詳しいようだ、お前は」
カーランの眉が微かに動いた。
「何が言いたい」
「いや?言わないでも、思い当たるだろう。それとも、直接指摘されたいか」
「ふん、何を言いたいのか知らんが、想像力が豊からしいじゃないか」
立ち去るカーランの後ろで呟かれた言葉は、その耳に届いたかどうか。
「忠告してやっているのだがな。先輩後輩ごっこを楽しんでいるようだが、所詮は単にあの雌猫に利用されているだけだと……」

次の日、ヒュウガとシグルドは二人、ヒュウガの兄が入院する病院で見舞いを済ませた所で、ウェルスが張る結界の兆しを見つける。
カーランの連絡先を知らぬ二人は、ヒュウガがミァンと共に見張りに付くとして残り、分かれたシグルドは急ぎカーランへ知らせに走った。
漸く病院へ、カーランも到着する。
「ミァン、状況は」
「まだ大丈夫よ……すぐに変態が始まる様子は無いわ」
「ヒュウガっ、大丈夫か?」
「平気ですよ。退屈で、居眠りしそうなくらいですよ」
「寧ろ、大きなエーテル力でうかつに刺激してしまう方が危険よ。なるべくゆっくり、静かに来て頂戴」
「分かった」
結界の入り口が開き、二人は足を踏み入れた。
「カールが間に合って良かったよ」
「全く、無茶をし過ぎだと…叱りたい所だが……今回に限っては冴えた手だったな。これで取り逃がすことなく、確実に仕留められる」
急ごう、と先へと促すカーランは、また背後から気配を感じ立ち止まった。あの晩、公園で出会った、あの男だ。
「何の用だ。また効率が悪いだとか、ケチでも付けに来たか?」
「今回のは成体だ、狩るなとは言わない無いさ」
「では、何だ」
「忠告、だ。今までのウェルスとは違う。お前では……いや、そうして一般人を連れ込み、ごっこ遊びのような事をしていたのでは、到底仕留められん。手を引け」
「ふっ……ケチを付けに来たのでなければ、得物を横取りに来たというわけか」
カーランが手を翳すと、エーテルの鎖が男の身体に放たれた。雁字搦めに、身体へと巻きつき拘束する。
「怪我させるつもりはないが、あまり暴れると保障はできん」
「クッ…、愚かな。こんな事をしているから……お前は……」
「大人しくしていれば、帰りに解放してやろう。行くぞ、シグルド」
何事か、言葉を放とうとした男の体に鎖が食い込む。シグルドは戸惑いながらも、歩き去るカーランの後へ続いた。

「あの……カール……」
「どうした?」
「願いを……俺なりに色々、考えてみたんだけれど……」
「決まりそうか?」
「あぁ…でも……えぇと……もしかしたら、カールには考え方が甘いって、怒られそうで……」
「ふっ……どんな願いを叶えるつもりだ?」
先から、前を歩くカーランは一定の歩調で、後ろを振り返りはしない。恐る恐る、シグルドは言葉を繋ぐ。
「俺って……何か自慢できる特技とか才能とか、ヒュウガみたいに頭が良いとか剣術もできるとか、そういうの無いしさ……最初は記憶をって思ったんだけど、それって、記憶が戻ったからってどうにかなることではないと思うし……きっとこれから、誰の役にも立てないまま、迷惑ばかり掛けて……そう思うと、それが嫌でしょうがないんだ」
カーランは少しばかり、振り返ってシグルドを見る。何か、言いたそうだった。それでも何も言わず、先を行く。
「でもカールと会って、誰かの為に……この国を変える為に、戦ってるの見せてもらって、同じ事が俺にもできるかもしれないって言われて、何よりも嬉しかったのってその事で、だから俺……、エレメンツになれたら、それで願い事が叶うんだ。こんな自分でも、誰かの役に立てるって、胸を張って生きていけたら。それが俺の一番の願いだから…」
カーランの歩調が、少し早まったようだった。シグルドも僅かに早足になり、距離を保とうとする。
「大変だぞ。怪我もするし、他の学生のように遊んだり、彼女作ってる暇だって無くなる」
「でも、それでも頑張ってるカールに……俺、憧れてるんだ」
先導していたカーランが不意に立ち止まった。
「……憧れるほどの…ものではないさ…」
「え……?」
あの不安を覚える、冷たさがあった。それは何処か、不安定な、脆い声で。
「無理して格好つけているだけで、怖くても辛くても、誰にも相談できない……ひとりきりで…涙さえ滲む事もある…情けない、惨めだろう。いいものではないさ、エレメンツなど」
「………カール」
彼が見せる冷たさ、それは自分自身に向けられたもの、だったのではないだろうか。
「……カールはもう、ひとりぼっちじゃないよ」
「ふっ……そうだな、そうだった、な……」
振り向いてシグルドの手を握るカーラン、それは今までに見た事も無い弱々しい表情だった。彼がそんな表情を見せるなど、想像しなかった。だから彼はひとりきり、冷たい場所に居なくてはならなかったのだ。
「本当に……本当に、俺と一緒に、戦ってくれるのか、シグルド……傍に…居てくれるのか……」
「カール……俺、なんかで良かったら」
彼のようになりたい。その憧れの思いだけでなく、彼の隣で、彼が冷たく冷え切ってしまわぬよう、傍に居られたならば。それもまた、新たにシグルドに芽生えた願いだった。
「……ふっ、参った…な……はは、」
カーランは僅かに潤んだ目元を乱暴に拭う。
「まだまだ、お前達の先輩ぶってなくては、ならないというのに……矢張り俺も、お前に取り立てて言われる程の存在ではないんだ」
「カール」
俯いたカーランが顔を上げた時にはもう、冷たさも、不安定な揺らぎも、何処にもなかった。普段の強気の表情で、少しだけおどけて、笑ってみせる。
「だけどせっかくなのだから。願いは、何か考えていた方がいい」
「はははっ、せっかく、かな」
「そうだぞ。契約は契約なのだから。ものはついでだ。何でも良い、億万長者だとか、綺麗な彼女、だって良いじゃないか」
「いや、その……」
「ではこうしたらどうだ。この敵を倒すまでに願いが決まらなかったら……ミァンに、美味いものと、そうだケーキを頼めば良いではないか」
「えぇ、ケーキ?」
「お前は甘いものが好きだろう。最高に大きくて贅沢な、祝いのケーキだ。それで皆でパーティを開くんだ。俺とシグルドの、エレメンツ結成記念だな」
「お、おれ、ケーキでエレメンツに?」
「嫌なら自分で考えるんだな!」
彼はもう、これまでの通り、シグルドの憧れるエレメンツの先輩として先を歩いていた。シグルドもそれに安堵し、笑みを含ませて急ぎ続いた。

「カール!変態が始まったわ!」
「分かった。今日は速攻で、片付けてやる!」
口端を歪め、何処か愉快そうに、カーランはエレメンツに変身を開始させる。光を纏い、その勇姿が現れ、そこへ目掛けて、ウェルスの分体が空を切り突進して来た。
舞うような動きで放たれたエーテルの剱が、その分体を次々に捉え消し去って行く。まだ飛び立たずに居た者は、怯んだほどだ。それすらも、逃がされはしなかった。
「身体が軽い!ハハ…ッ、こんな気分で、戦うなんて!」
シグルドの心さえ、躍ったほどだ。傍に居るだけで、まるで共に戦っているかのように、胸が高鳴る。足が跳ねんと疼いた。その腕を引き、カーランは次のステージへと走る。
「もう、何も怖くない!……ひとりぼっちじゃない、俺は……塵じゃない!」
ウェルスの結界の中に居るとは思えない。まるでこちらが作り出した結界の中に、ウェルスを捉えたかのように。

扉を開けた先には、ヒュウガがミァンと共に居た。
「待たせたな」
「遅かったですよ」
軽口を叩きながらも、ヒュウガは安堵したような表情を見せる。恐ろしかったのだろう。
「来るわよ!」
ミァンが声を上げ、その視線の先に、ウェルスの本体が居た。
カーランが踊り出る。
「せっかくのところ悪いが、一気に決めさせてもらう!」
本体へ一瞬に接近したカーランは、その体を、蹴り付ける。ゴム毬のように、ウェルスの体は結界の端まで跳ね飛ばされた。
「貰うぞ!」
そこへ追い討ちを掛けるように、剱が放たれ、体へ幾つも突き刺さり、ぱたりと地へ落ちた。
「やった……!」
その頭へ、剣を突き立てたカーランには、既に勝利の笑みさえ浮かび。
「これが最後だっ!」


結界の入り口で囚われていた男の鎖が、ふっと、溶けるように消えた。
「調子に乗るからだ……。あの、塵め……」

 

 

 

 

……っていう。

 

 

さやかがヒュウガはミスキャスト……
ほむらがガチガチの敵キャラぽくてすみません。ほむら…良いキャストが見つからず…ようやく苦肉の策的に思い浮かんだのがカレルレンw
とするとマドカはソフィアにしなきゃ……。
シグラム的にはマミさんとマドカはだいたい合ってる!合ってる!
ただあのやっぱりサヤカをヒュウガには……ヒュウガは赤い子にした方が合ってそう。シグをサヤカに。上条君をバルトかw
そうやって行くとシグラムにならないので却下ですよ。マミさんがカールでシグラムじゃないとヤダヤダ
でもマミさんは塵じゃないし、あのシーンも別に自分が苛められっこというのでは…w
逆にあれホムラへのリア充アピールだったんですよねきっと。

それとあと今更思いついたんですけど、
ほむらはカイン様の方がありじゃね?
「アーネンエルベの夜……向かい撃てると思うか?」
「さぁ?可能性くらいあるのではないですか?(鼻ほじほじ)」(赤「やってみなきゃ分かんないんじゃねーのー?」とかってセリフ…無かったっけ私一人で十分、でしたっけウロ)
「それが私にできるしょく罪なのだ……」あらやだほむほむ
マミさんにジュバッとやられる辺りも「何の真似だ?ラムサス……このような事をしている場合では!」あらやだほむほむ

11.5.8