向かい風

 

喉を丸く開いて叫んだ。叫んだと言うよりは、吼えていた。身体はUの字に折れ曲がったサックスフォーンのように、腹から喉まで真っ直ぐ天を仰ぎ、声はよく通った。その中心に心臓がぶら下がっている。振り子のように不安定にぶら下がった心臓を支えようと、胸に手を当てた。触れられようもないそれに、触れようと胸をかきむしった。
向かい風の空気は肌に優しく、満ち足りていた。ただ私一人の頭上にだけ、重く影を差すものがある。

 


ぽっと浮かんだ文章を、どこかで使え無いかなーと思って覚書程度に。

2012.2.1