世界の終わりを告げる始まりの日

 

初めて“彼”を“見た”時、“彼”は靄のような、淡い緑色の、光の集合でしかなかった。
遊び場は、いつもひとりぼっち、U.M.N仮想空間内だった。どんな最新のプログラムも、試させて貰えた。どんなロケーションにも、行かせて貰えた。
何もかも遊び尽くした、何処までも果てなく広大で、けれど窓の無い閉じた世界。その場所で。
「君は、誰なの?」
“彼”を“見た”。
―― 僕が分かるのかい?
―― 僕……僕は、モナド。
“彼”の“声”は不思議な響きだった。
「モナド?それが君の名前?」
―― 名前……とは違うかな。
掛けた声に、応えが返って来るのさえ、不思議に思える程。それ故に、酷く不安を覚えた。すぐに消えてしまうのではないか、夢、なのではないか。幻のような世界の中の、幻。それは、とても不安定なものにに違いないから。
―― モナドは、この閉じた世界に満ちて漂う波のようなもの。世界という存在、そのものと言っていいかな。
「モナドは世界?良く分からないよ。君の名前は何なんだ?僕は、クラウスだ。僕の名前は、クラウス」
―― クラウス。僕はここだけに止まっていることはできないんだ。行かなくちゃ。
―― また会おうよ。君が望めば、また会える。明日も。
―― 明日は、もっと長く、君の傍に居られるはずだよ。その次はもっと、またその次は、もっともっと長く。
―― 君が望むならね。

その日は、まだ幼い少年だったクラウスに、たった一人の友達が出来た日。そして、星の崩壊へと導く、小さな探究心の種が、初々しく清らかに、芽を出した日だった。

世界の終わりを告げる、始まりの日 終

 

あれ…っ うっかり〆てしまった…w

何処かで聞いたタイトル。被ってたらすみ…ませ…ん…

11.3.9