生理現象
会話のレスポンスがほんの少しだけ遅いかと、気が付いたのはもうその時だったが、特別な驚きは無く、淡々とした気持ちで、言うなれば「来た」とその程度である。 会話の内容は何だったか、それも参考にはならず、ただそのごく分かり難い前触れだけは在って突然に口を噤み沈黙したかと思うと、顔を歪ませ俯く。 (あー……) 言うなれば「来た」である。 ラムサスの腕を掴みベッドの上へと誘導し、そのついでにティッシュボックスを掴み携え、シグルド自身もそこへ腰掛ける。 それを待たずして嗚咽が聞こえ始め、シグルドは何も尋ねず無言で、二の腕に軽く手を添えてウンウンと頷く。 ポタポタと涙を腿に落としていたラムサスは不意に嗚咽を止め、顔を上げてシグルドを見据える。シグルドは眉を下げ首を傾げてみせる。 「いッ……!」 ラムサスが顔を上げたまま、またワッと泣き始めた。叫び声を寸で抑えたのは、シグルドである。ラムサスの張り手を食らった、シグルドである。 「……っ、っ、――っ!」 本気ではないが、加減を間違えている。シグルドも涙目になって悶えながらその場を共有した。 「ふっ、う、っう、う、」 手元に置いたティッシュを2枚重ねて取り出し、泣きじゃくるラムサスの鼻先に持って行き、鼻をかませ、頭を撫でてやり、倒れ込んで来る体を受け止め、溜め息の代わりに何度となく頷く。 服をガシガシと噛まれ、それは困ると思い離させると、しゃくりあげながらジッとそこを凝視していたラムサスは、シグルドの服の裾に手を掛けた。 何が始まるのやらと身構えると、どうやら脱がそうとしているらしく、されるがままに居ると、どうにも手間取っているようなので自分から脱ぎ捨て、またラムサスが服を脱ごうとするのも手伝ってやる。 と、今度はベルトへと手を掛けたシグルドはその手を慌てて離し、再び雪崩れ込んで来たラムサスの体を受け止め、離した手を背中へと回す。苦しい程に首に腕を回ししがみつくラムサスは、隙間なく胸も腹も密着させ、耳元で一層強く嗚咽を漏らし始める。 全く先が読めず、難しい。強く抱き返しているとそのうちに、今度は耳朶をチュクチュクと音を立てて吸われ始め、その意味を頭をフル回転に考えてみる。 何処かでこんな光景を見たかと思う。あれは動物番組だったか。ライオンの子供だったか。むくむくの仔ライオンが、たどたどしい手付きで、同じ大きさのむくむくの仔ライオンの頭を押さえつけながら死の物狂いで耳朶を吸いに吸い尽くしているあの光景。皮毛が唾液でベタベタになってしまった仔ライオン。あぁ可哀想だったなぁ、と思い出す。 そんな事を考えながら、片手をラムサスの背中から離し、こっそりと、自分のズボンの中へと滑り込ませる。気付かれないように、こっそりと。 ラムサスの動きが止まる。 「……あ」 シグルドの首にまわされていた腕が外れ、手の行く先を追いかけ、先回りしてしまった。 「いや、その……バレた?」 肩口に顔を埋めていたラムサスがゆっくりと顔を上げ、その泣き腫らした面を、シグルドのまん前に陣取らせる。 「別にそういう訳じゃないんだけど、突っ張っちゃって、痛くて。ちょっと、ポジションを…チェーンジ、みたいな…それだけ」 険しい表情が、より厳しく。わなわなと震えていた唇が、ピクリ、ピクリと痙攣した後、クッと釣り上がった。 「ふ……くく、く…っ…」 「あ、あるよな?こういう事。不可抗力、だよな?」 「……ある、確かに、ある……ふ、最低だ…、クソ…っ」 悪態を吐き睨みながら、鼻を啜りしゃくり上げ、口元を緩めて笑い声を漏らし、当人も如何対応したら良いのか分からないのだろう。ならば、シグルドも声を上げて笑うしかない。 「悪い、本当悪い。中断させた。いいぜ、落ち着くまで好きなだけ」 「良い。もう醒めてしまった。本当に最低な奴だ」 「俺だけか?悪いの」 「当然だ」 酷い話である。理由無く打たれた頬はまだ痛いし、唾液で濡れそぼった耳が気持ち悪くて仕方ないというのに。 「腹減らないか」 「減ったな」 「だよな」 暫く間があって、ラムサスの方から、ピザ屋の広告がパソコンの本体の上に置いてあると切り出して来た。この時間にピザは如何だろうと思いながら、この時間だからこそ食べたくなるような気もして、「どけ」と上に乗っているラムサスを退け、立ち上がる。 「いつものでいいか?マルゲリータ。何だかんだで俺、あれが一番美味いと思うんだ」 のっそりと起き上がるラムサスが頷くのを見てから、広告を電話機の横に置き、受話器を取って番号を打ち込み、別の手で問題のものを上向きに直しながらコール音を聞く。 「配達、頼みたいんですが」 後ろでラムサスが勢い良く鼻をかみ始めた。 生理現象 終 |
あーなんだこれ('A`)
ちゃんとあるべき攻シグ×あるべき受ラムの正しい姿と思う。
シグラムがどうにも胃の痛い展開にしかならなくて参った困った、とパラレルに舞い戻ってしまいました。
なんだってもう。
ラムちゃんの限界は会社のそこそこ上役ですとか、そのくらいだと思う。
国の軍の総司令官だとか無理の無理無理!
大告白するとこんなシグラムが本当は!読みたいん!クソッ、最低だ。シグラムなんて最低だ。
この後ピザでも食いながらちゃんと改めてラムちんに色々溜ってたもんをお話させる攻シグとか出来すぎてて絶対ニセモノ。パラレル。
そして定期的に突然泣き出すラムちんとかなにそのメンヘラ。これは多分公式。
2010.11.19 完成
そして、私は最近シグバルを書いていないが、書き方は覚えてるのか?とか
シグルドはシグバルになっても同じシグルドなのか?とか
シグラムのシグとシグバルのシグは同一人物として書けているのか?とかで
後半会話をシグバル仕様に。
生理現象(リサイクル)
「……あ」 シグルドの首にまわされていた腕が外れ、手の行く先を追いかけ、先回りしてしまった。 「いえ、その……これは…そういう訳では、ないんですが」 肩口に顔を埋めていたバルトがゆっくりと顔を上げ、その泣き腫らした面を、シグルドのまん前に陣取らせる。 「少々、きつくて……位置を…変えようと、思いまして」 険しい表情が、より厳しく。わなわなと震えていた唇が、ピクリ、ピクリと痙攣した後、クッと釣り上がった。 「ぷ……くく、く…っ…」 「ありますよね?こういう。別にそういう訳ではないんですよ?」 「……ある、俺はあるけど、お前ぇはそこ空気読めよ、いい加減、いい歳なんだからよ…」 「幾つでも、一緒ですよ。男なんですから」 「馬鹿、それにしたってよ、最低だぞお前」 悪態を吐き睨みながら、鼻を啜りしゃくり上げ、口元を緩めて笑い声を漏らし、全ての感情が混ぜこぜになって酷い有様になっている。シグルドは今度こそため息を吐いて、ティッシュで顔を拭ってやる。 「弁解など、できませんが。中断させてしまいました、申し訳ありません。まだ泣き足りませんか?」 「もう醒めたっつーの。本当に最低な奴だ」 悪いのは自分だけのようだ。酷い話である。理由無く打たれた頬はまだ痛いし、唾液で濡れそぼった耳が気持ち悪くて仕方ないというのに。 「それより、腹減った」 「何か頼みますか?ピザの広告が、確かポストに入っていたのを取ってありますが…」 「ピザァ?今の時間に?」 この時間にピザは如何だろうとは思うが、この時間だからこそ食べたくなるなるのだ。力説するシグルドにバルトは呆れたような目を向け、「好きにしろよ」と追い遣る。 「絶対、美味しいですよ。提案した私を褒め称えたくなるに、違いないんですから」 「分かった分かった。俺、何時ものがいい。マルゲリータ?あれが何だかんだで一番美味ぇと思うんだよな」 「えぇ、私もあれが矢張り、一番」 広告を電話機の横に置き、受話器を取って番号を打ち込み、別の手で問題のものを上向きに直しながらコール音を聞く。 「配達を、頼みたいんだが」 後ろでバルトが勢い良く鼻をかみ始めた。 |
バルトは溜め込んでわっと泣くとかないですよね
なるべく早めになんとか納得行くようにするだろうし、溜め込むとしたら墓場まで持っていくとか
二度と姿現さない覚悟でどっかに持っていくとか
やっぱご主君よなぁ…好きだなぁ…
シグルドはバルトとラムサスの合いの子みたいになってるので
そのまま自分のセリフ言うだけでなく、
ラムサスのセリフ掻っ攫った方が合いそうだったり逆にバルトがシグルドのセリフ喋った方がしっくり来そうだったり
ピザ食いてぇ