可、愛

 

箱の中に詰め込まれていた子猫達は、どれも真っ白な毛色をしていて、綿毛のような頭に小さな耳を二つ、てっぺんよりは少し下がった位置にちょこんと着けている。目も幾らか下がった位置に。情けない表情で、か弱い自分達をどうか庇護して欲しいと、高い声で鳴き続けていた。
シグルドは、立ち止まってそれを眺め、
「猫」
と言った。
カーランも立ち止まり、少し背を伸ばして眺めた。
シグルドは道行く前へ向けたままだった爪先を、そのまま先へ一歩進めた。カーランはまだ箱の方へ顔を向けていた。シグルドは爪先の向きを変えて、箱の方へと大股に一歩進める。カーランは、その場に立ったままで体の向きを変えた。
箱の前にしゃがみ、暫く覗き込んでいたシグルドは、何も言わずに、手を突っ込んだ。
抱き上げて、カーランの方に差し向ける。イヤイヤ、とカーランは首を横に振った。
「抱っこ」
カーランは手の振りも付けて、首を横に振る。まるで泣き出すのかと、思う程の、苦笑いを浮かべて。
シグルドはカーランの方に一歩踏み出して、手を振らせている胸に子猫を突き付ける。

顔を引き釣らせて、肩を怒らせて、全身の毛を逆立たせて、シグルドの手に自身の手を重ねる。

手も足も真っ直ぐに伸ばして、指も全て開けるだけ開いて、真っ赤な口を大きく開けて、キャア、と高く鳴いた。

「いい、もう、いい!」
一瞬の大冒険を終えてシグルドの腕の中に戻って来た子猫は、もう安堵の表情で微睡み、手の平で乳を探りながらシグルドの指に吸い付いている。
カーランはまだ肩を怒らせたままで子猫を食い入るように見つめていて、徐々に、徐々に、肩が下がり、目尻が下がり、口端も“ヘ”の時に下がり、頭も下がり、猫の背になって、小さく小さく、聞こえない程の声を零した。
「かわいい」
シグルドは親指で優しく子猫の頭をさすりながら、少し遅れて、「うん」と言って頷く。またそれに遅れること、一拍の後、カーランは急に顔を上げて、まるでシグルドが何かとんでもない事を言ったとでも、責め立てでもするかのように、息を飲み眉間に皺寄せた。
「かわいいな」
シグルドはそのカーランに向かって、微笑んだ。
カーランはそれで漸く、変な顔で笑って、
「うん」
と頷いた。

 


動物苦手なんだけど好きなカールを受信。
動物に限らず、小さい弱いものが怖いのかもしれない。
逆に大人ラムサスになると、動物に囲まれてもふもふされてるような光景がw
自分を守るのに精一杯だった頃と、弱い者守れるようになって、っていうのかな…。

と思って書いてたらなんか、第一子誕生に戸惑うパパみたいに見えて来て…!気のせいか…!?
産むのはシグだよね。カールは、パパだよね。パパカールかわいいかわいい